岡井盛夫


素晴らしき感謝状


 先日、横須賀市の観光課の方からお電話をいただきました。電話の内容は、
−貴方のホームページである「三浦と土佐のおんらいん」(※)は、三浦半島の四季折々の素晴らしき風景を連載している(斎藤光弘さんの写真)。このホームページを見て、横須賀市を訪れる観光客が著しく増加している。ついては、感謝の印として映画鑑賞並びに昼食会を開催し招待(夫婦)をしたい。別途、斎藤光弘さんにも同様の招待をしている。−
 とのことでした。
※2001/5〜2002/12

 映画館は、横須賀ダイエー6Fの「横須賀ヒューマックスメシネマ8」の一つでした。そこに着いてまず恐縮したことは、二人のミス横須賀が笑顔で親しく出迎えてくれたことでした。すぐに、座席に誘導してくれました。さらに驚いたことに、映画館は私達夫婦だけの特別上映でした。

 映画は、予め数本の中から私達が希望した「ビューティフル マインド」でした。
 この映画は、第74回アカデミー賞の4部門を受賞しています。ジョン・F・ナッシュの伝記です。彼は1994年のノーベル経済学受賞者で、天才的な数学者として知られています。

−映画は、若いナッシュがプリンストン大学の大学院に到着することから始まった。大学学院生の主人公は変人であった。(俗に、天才と狂人は紙一重とかいう)。数年後、彼は「非協力ゲーム論」(後のノーベル賞受賞の根拠となった)を発表して、アメリカ数学会のスターになった。そして、恋をして結婚もした。
 その彼の才能に、アメリカ国防省の諜報員が目をつけた。その後に映画は急転回して、ナッシュの精神分裂症状(極端な幻覚)の世界に入った。ところが私は、劇的な映画的手法に翻弄されて、しばらく幻覚と事実を区分けることができなかった。−

 ところで、「ビューティフル マインド」は息子(独身33歳)の推薦でした。彼は特に、母親に「鑑賞を勧めたい」とのことでした。何故でしょうか。
 この映画のラストシーンを、母親に見せたかったのだと思います。一言でいえば、ナッシュの妻・アリシアの内助の功がフットライトを浴びました。場面は、ノーベル賞受賞の記念式でした。その式場でナッシュは愛妻アリシアに向かって、出席者全員の前で、永年の「内助の功」に対し、感謝の気持ちを述べました。
 念のために申しますが、わが家には特筆すべきほどの内助の功も、それに感謝する気持ちもありません。

 映画がENDになって映画館を出た途端、私は、自分自身の幻覚症状に気づきました。
「横須賀ヒューマックスメシネマ8」で「ビューティフル マインド」を鑑賞したことは間違いないことでした。観客が、われわれ夫婦二人きりであったことも事実です。しかし、横須賀市が私のホームページに関して招待してくれたとか、ミス横須賀が笑顔で出迎えてくれた、とかは私の錯覚でした。
(私のホームページの影響力はともかくとして、斎藤光弘さんの功績は表彰があってしかるべきものです)。

 なお、映画館の入場料は大人1600円でした。われわれ夫婦は60歳を越えていますから割引がありました。二人2000円で、映画館は「貸切」でした。
 最後に、素晴らしき映画を観る機会に恵まれたことについて、横須賀市に対して、心からの感謝を申し上げます。
 念のために申し上げます。この気持ちに嘘偽りはありません。(2002年5月)