岡井盛夫・11/03/20

関東大震災の人災



 東北関東大震災は、世界の人々から注目されています。日本人の冷静沈着ぶりが評価されています。確かに、食料などの強奪行為は見られません。全国的に支援活動が広がっています。火事場どろぼうや詐欺行為も皆無ではありませんが、物の数ではありません。その原因の一つは、日本人の同族意識にあるのではないかと思われます。
 しかし、大正12年の関東大震災の際には、同じ民族意識から真に恥ずかしいことをしました。今更取り立てることではありませんが、「日本人の歴史教科書」として忘れてはならないことです。


 1995年(戦後50年)、大正12年に発生した関東大震災について自分史に書いたことがあります。
 (前文略) ここで、小学生の私と歴史上の「朝鮮人」について少し補足をします。当時は強い民族意識(神がかりの日本民族優秀論)がありましたが、その民族意識からくる他民族差別思想がありました。「朝鮮人」については、私は他の少年とは少し違った見方をしていました。その理由は母の体験に関係があります。
 母は、東京で関東大震災を体験しました。大正時代に上京し、朝鮮出身の人を隣人に持ち懇意な関係にあったそうです。「関東大震災は1923年の9月1日に起こりました。マグニチュード7.9の記録的な大地震でありました。関東全域から静岡、山梨県にいたる広域で激震と火災と津波が発生し、10万人近い死者が出ました。関東大震災はまた、歴史上に汚点を残した人災でもありました。時の軍隊と警察は、意図的に流言飛語(例えば、朝鮮人が井戸に毒を投げ入れているとか)を流し、煽動された大衆が朝鮮人を弾圧したのです。その手法は、在郷軍人会・消防団などを中心に自警団を作らせ、自警団は朝鮮人であれば誰彼を問わず捕まえ、暴行し、虐殺する」という狂気の行動に走ったのです。
※「」内は『体系・日本の歴史』(小学館)の要約

 現実の朝鮮人を知らない日本人は、その流言飛語を信じたのです。朝鮮人を木刀でなぐり竹槍で突いたのです。近隣のきわめて紳士的で温厚な朝鮮人を知っていた母達は、一人の朝鮮人を匿ったといいます。少年の私はその事実を聞いて知っていました。震災直後から日本人か朝鮮人かの見分け方に使ったという、言葉のアクセントがありました。一般の少年達は、面白がってその口真似を得意としていましたが、私はその遊びには加わることができませんでした。
(後文略)