岡井盛夫

●劣化ウラン（ｄｅｐｌｅｔｅｄ　ｕｒａｎｉｕｍ）弾とは何か

原子力産業では、原子力発電に必要な“核分裂するウラン２３５”を濃縮する過程で、不要のウラン２３８が大量に発生し、廃棄物となる。

１立方センチメートル当たりの密度が最も大きい金属は、純金の１９．３グラム。ウランはこれに次いで重い（１９．０４）。ウランは重いので、弾頭にこれを仕込んで発射すると、標的に衝突した時の運動量が、通常の爆弾のほぼ１．５倍になる。
戦車のように強固な装甲板で覆われた装備でも、劣化ウランを打ち込むと、貫通し戦車内の人間を焼き殺すことができる。
それと同時に、爆弾は二酸化ウランとなって気化し、大気中に拡散しながら周囲を汚染する。

●劣化ウラン弾による汚染と被爆

劣化ウラン弾は、湾岸戦争（1991年）でイラクに対して使われた。７０万人の出征兵士に、大量の脱毛症や記憶喪失など（※）無数の障害が出た。この症状が、終戦直後から湾岸戦争症候群と呼ばれている。
この被害は、兵士だけではなかった。兵士の子供たちに重度四肢障害として発生した。９５年頃から社会問題となっている。
原因として、劣化ウラン弾が浮上した。
米国下院はその因果関係を検証するための公聴会を開催した。従軍兵士と科学者は豊富な実証によって、劣化ウランが原因である旨の証言をしたが、国防総省は否定した。
なお、イラク住民については、ほとんど調査が行われていない。
※,
(1)その他の症状は、下痢や疲労感、癌、出産異常などの集団発生。
(2)湾岸戦争では１００万発近い発射された（３００万トン）。ほぼ３万人が後遺症で苦しんでいる。